「月の桂」 増田徳兵衛商店

当世はものみな、個性喪失の時代とか。

なるほど酒づくりの世界を眺めても、四季醸造のオートメーションを中心とした近代化、

合理化がすすめられて、悪貨現れて良貨影をひそますという言葉の通り肝腎の日本酒独特の

 ”個性”が失われつつある昨今でございます。

”日本酒の特徴は、その季節性にある”と、さる高名な酒博士も指摘しておられますが、

まことに季節性こそは日本酒を愛する者にとって根本要素であり、

生命そのものであると 申せましょう

私どもでは、芳醇な酒の個性をどこまでも守り育てつづけるために、

いまだに手づくりに より厳冬期にのみ仕込みをするという、

昔ながらの酒づくりの方法を大切にいたしております。

合理主義第一の今日では、この姿もいささか”変わり種”として大方の目に映るかもしれませんが 、

真に酒を尊び、酒を愛する多くの方々の御期待と御要望にお報いすべく、

また 三百年(延宝3年:1675年)この方”酒ひとすじ”

に打ち込む者のひたすらな矜持(きょうじ)として、

日本酒本来の伝統的な酒づくりにこの上とも 精進してまいる所存でございます。

「清酒月の桂」

「原酒琥珀光」

「大極上中汲にごり酒」

は、おかげをもちまして広く江湖の御好評 をえ、御愛飲を頂いております。

就中、「大極上中汲にごり酒」


”これぞ季節がそのまま息づいている、昔なつかしいうま酒”

として愛飲家のみなさまからお喜びとお賞めの言葉を数多く頂戴いたして おります。

弊店吟醸のこれら”手づくりの酒”が、現代に”個性”をたずねる手蔓ともなりますれば、

まことに 光栄に存じます。

どうか末永く御愛飲たまわりますよう、伏してお願い申し上げます。


第十三代 増田衛兵衞 敬白